【読書】読んで歩ける、リア充のための”富嶽百景”
こんにちは、ナリカワです。 これで9個目!
今日も名作を一つ紹介したい。
太宰治 1939年
富士山にはたくさんの絶景がある
どれも絶景です。
このように富士山のビューポイントは沢山あるのですが、 ”富嶽百景”はその中でも河口湖を舞台とした小説です。小説といっても、
1938年(昭和13年)9月13日に太宰は、井伏鱒二の勧めで山梨県南都留郡河口村(富士河口湖町河口)の御坂峠にある土産物屋兼旅館である天下茶屋を訪れる。 Wikiより引用
ここでしばらく生活した太宰の実体験が素材で、そのため登場人物も太宰たちそのままの姿で登場している。そして、15000文字程度の短編なのでリアルが多忙な人でも気軽に読める。
リア充になれるかどうか、ここで決まる
”富嶽百景”の作中で太宰達が登った三ツ峠の登山ルートは、今でも整備されており日本ウォーキング協会認定コースとなっています。
しかも健脚度は三段階評価でもっとも易しく、登山が苦手な彼女でも大丈夫。
女の子と富嶽百景デートで絶景を見る…
やったね! これで君もリア充になれるぞ!!
なんて、僕はこの記事でそんなことを伝えたいわけじゃありません。
むしろ、これはリアルが充実していないからこそ生まれてしまう欲望のままの発想と言えましょう。これから本当にリア充になるべき気持ちを紹介します。
導入が長くなりましたが、
僕は”富嶽百景”を読んで、本当に不幸(リアルが充実していない状態、河口湖で生活する前は、二回の自殺未遂や鎮痛剤パビナール中毒による妄想に愛する妻の裏切りなど、深い傷を負っていた)だった太宰治が、まともな、健全なこころで、それがまさにリア充になるべきこころを持って、快復に向かっていく日常の風景を強く感じることができたのです。これは本当に気持ちのいいことだと思います。
実体験が素材の小説ですから、本当にほのぼのした日常の話が描かれています。文学ですから、このあたりを楽しんでもらいたいです。
少しですが、序盤にあるエピソードを一つ紹介します。ここだけでも、僕が感じたこと伝わると思います。
私が、その峠の茶屋へ来て二、三日経つて、井伏氏の仕事も一段落ついて、或る晴れた午後、私たちは三ツ峠へのぼつた。三ツ峠、海抜千七百米。御坂峠より、少し高い。急坂を這はふやうにしてよぢ登り、一時間ほどにして三ツ峠頂上に達する。蔦つたかづら掻きわけて、細い山路、這ふやうにしてよぢ登る私の姿は、決して見よいものではなかつた。井伏氏は、ちやんと登山服着て居られて、軽快の姿であつたが、私には登山服の持ち合せがなく、ドテラ姿であつた。茶屋のドテラは短く、私の毛臑けづねは、一尺以上も露出して、しかもそれに茶屋の老爺から借りたゴム底の地下足袋をはいたので、われながらむさ苦しく、少し工夫して、角帯をしめ、茶屋の壁にかかつてゐた古い麦藁帽むぎわらばうをかぶつてみたのであるが、いよいよ変で、井伏氏は、人のなりふりを決して軽蔑しない人であるが、このときだけは流石さすがに少し、気の毒さうな顔をして、男は、しかし、身なりなんか気にしないはうがいい、と小声で呟いて私をいたはつてくれたのを、私は忘れない。
とかくして頂上についたのであるが、急に濃い霧が吹き流れて来て、頂上のパノラマ台といふ、断崖だんがいの縁へりに立つてみても、いつかうに眺望がきかない。何も見えない。井伏氏は、濃い霧の底、岩に腰をおろし、ゆつくり煙草を吸ひながら、放屁なされた。いかにも、つまらなさうであつた。パノラマ台には、茶店が三軒ならんで立つてゐる。そのうちの一軒、老爺と老婆と二人きりで経営してゐるじみな一軒を選んで、そこで熱い茶を呑んだ。茶店の老婆は気の毒がり、ほんたうに生憎あいにくの霧で、もう少し経つたら霧もはれると思ひますが、富士は、ほんのすぐそこに、くつきり見えます、と言ひ、茶店の奥から富士の大きい写真を持ち出し、崖の端に立つてその写真を両手で高く掲示して、ちやうどこの辺に、このとほりに、こんなに大きく、こんなにはつきり、このとほりに見えます、と懸命に註釈するのである。私たちは、番茶をすすりながら、その富士を眺めて、笑つた。いい富士を見た。霧の深いのを、残念にも思はなかつた。
僕も登山デートが悪天候だろうと余裕のあるこころもちでその場の雰囲気を楽しみたいと思うのです。これは、どんなときでもしっかりこころを向き合わせることで可能になると思います。せっかくのデートを台無しにしちゃ、ちょっとダサいよね。だって、絶望に暮れてた太宰治でも、こんなにまともなこころで茶店の老婆と楽しむことができるんです。実物の富士山が見れなくても、写真の富士山を見て良い富士を見たってのは、やっぱ格好いいね。
他にも、”富嶽百景”の中で太宰治は天来の素質で持つモテ技を繰り広げます。(笑)
実際この頃が太宰治の文学における中期にあたり、"走れメロス”など健康的な名作を世に生み出していきました。暗いのが苦手な方も、このあたりの太宰治なら読めると思います。
もし、今日の記事で、あなたがタイトルを見てクリックしたときの気持ちよりも優しい気持ちになれたなら、”富嶽百景”という名作の力が伝わったのかなと思います。
ではまた
【読書】"荒木飛呂彦の漫画術"を読んで
こんにちは、ナリカワです。 今日で8回目!
今日も名作を一つ紹介したい。
荒木先生のノウハウ、役にたたないハズがねェーーーッ!
荒木飛呂彦が自身の努力で練り上げたノウハウを惜しげもなく紹介するこの本。ノウハウというのは漫画の描き方がベースだが、自身がプロの漫画化になるために、またプロになってからも壁にぶち当たってきた際、何を分析しどう対処してきたか。この本にはそうしたことが書かれている。
漫画ですから特にどうすれば読者の興味を惹くのかというものが多く、我々のような漫画家ではない人間の想像では追いつかない工夫が凝らされていることに感嘆した。
僕は今日まで書いてきた記事に「どうも読みたくならないぞ」と疑問を感じていたのですが、この本を読んで光が差し込みました。
以下、"荒木飛呂彦の漫画術"を読んで自身のブログに反映させようと思った工夫。
必ず成長するように描く
荒木先生は漫画のストーリー作りをするとき、まず起承転結を考える。
その次に、主人公は「常にプラス」に向かっていかなければならないとするそうだ。
主人公がどんなに頑張っても努力しても、結局最後には負けてしまう、死んでしまう。そんな漫画だれも読みたくないのだ。僕もそう思う。そんなの読み続けたら落ち込む。さらに、主人公がふらふらしたり、上がったのに下がるのもダメだという。
もちろんバッドエンドで成り立たせる例外はあるが、それは「常にプラス」の基本を知ったうえでできるようになるもので、深く読み込めば「常にプラス」の法則にかなっているという。そのあたりは本を読んで理解してほしい。
ここで漫画からブログに置き換えてみた。僕のブログはストーリーも起承転結も主人公がプラスだとかもさっぱりないぞ。これは反映させてブログをアップデートせねばなるまい!
まず、ストーリーはよく考えることができなかった。
しかし、このブログの主人公が誰かは明白だ。
管理人である、この僕です。僕は常に「プラス」に向かわなくてはならないッ!
そこを決めてからだが、ストーリーのようなものを設定した。それは僕が名作をひとつずつでも紹介し、その紹介した数が増えるほど「プラス」に向かう。僕はそういう旅にでたことにする。いつの日か、この人が言うなら間違いないと言われるような実力や名声を得るために。無謀に思われるかもしれないが、僕が地道に続ける覚悟を持っているとするなら、それは勇気として映ることだろう。
荒木先生曰く、
「勇気」こそが最も共感される
そして、これを反映させようと考え今回から取り組んだのが冒頭にある
こんにちは、ナリカワです。 今日で8回目!
今日も名作を一つ紹介したい。
だったのでした。前回よりもあなたにとって魅力的でない名作が紹介されていた場合、読者のテンションが下がると思ったのです。つまり、名作の魅力具合がプラスマイナスを決めるものではなく、記事の数がプラスマイナスを方向付けるものとしたかったという狙いです。ジョジョの第三部でも、エジプトに向かう道中の敵の強さや味方の強さで図るのではなく、エジプトに着実に向かっていることで、各話にて主人公たちが「常にプラス」となる工夫をしたそうです。
次回も続けてみます。
見えないものを可視化する
荒木先生は、絵とは何かという話で、
絵の本質的な役割は、見えないものを可視化して伝えることだ。
と考えを述べていました。
描き手は何を伝えたいのかと言えば、愛や友情、正義など目に見えないものであり、見えないものを絵にしないといけない、と。見えないエネルギーの破壊力を表現したりするのもそうです。大友克洋先生は世界観や雰囲気の可視化が非常に上手ということや、鳥山明先生によるシンボル化の意味等にも言及しています。
僕も、例えば岩明均先生は切なさの心理描写がとびぬけて上手いなとか、漫画でも他人が描いていない分野に踏み込むということが大事らしく、それは可視化の点においても特に影響があるなとか思いました。
音楽も目に見えないが、それを可視化しているのが音符で、見た目が美しい楽譜はやはり良い音楽だということも、荒木先生は調べたようです。
これらから、僕のブログはどうすれば他人が描いていない分野に踏み込めるんだろうと考えました。僕のブログは何を可視化できるんだろう。
僕のブログは名作を紹介するわけですから、目に見えない名作のパワーを伝えることが目的です。結果、名作の持つパワーを文章によって可視化する。まずこれは絶対できるようになるべきだと確信することができました。
さいごに
僕のブログの内容がこうまで変化したことで、"荒木飛呂彦の漫画術"がもつパワーは可視化されたと感じましたか?感じていれば僕の試みは成功です。
ブログに役立つ点がまだまだ書かれていたことはもちろん、他にも役立つ内容ばかりでおススメの一冊でした。
さすが荒木飛呂彦、俺たちにできないことを平然とやってのける。
そこにシビれる!あこがれるゥ!
ではまた
【音楽】モーツァルト:レクイエム(カール・ベーム,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)
レクイエム ニ短調 k.626
カール・ベーム 指揮
モツレクファンが最後に辿り着く場所
未完にも関わらず「三大レクイエム」に数えられるモーツァルトのレクイエム。僕が初めて触れた「三大名曲」といえば「ドラキュラ三大名曲」とされる”Beginning”、"Bloody Tears"、"Vampire Killer"に違いないが、尺の違いにも関わらずモーツァルトのレクイエムの方が繰り返し聴いているのではないか。それほどに、一生聴き続けても感動が衰えない名盤中の名盤。どれだけ支持されているからAmazonの評価で他と見比べてみれば一目瞭然だろう。
人にこれをおススメするときはいつも、「黙って聴け」と思ってる。あと初見では「モツレク」って略し方に慣れずちょっとウケる。
ジュースマイヤー版、カール・ベーム指揮
上で述べた通り、レクイエムはモーツァルトが死の直前に作曲していたもので未完のまま没してしまった作品だ。そのため死後にモーツァルトの奥さんコンスタンツェに依頼されたジュースマイヤーが補作した。しかし、ジュースマイヤーの補作がモーツァルトらしくないと批評されてしまう。結果、新たな補作としてバイヤー版やらモーンダー版やらかなりの数の補作がでている。それらも有力な補作として完成しているが、とりあえずもっとも演奏されるのはこのジュースマイヤー版である。正直クラシック素人の僕にはこの辺さっぱりだが、この演奏が良いことはわかる。
カール・ベーム指揮によるこの演奏は他と比べスローテンポらしいが、僕はこれがスタンダードになってしまっている。しかし、このスローさがめちゃくちゃ音を聴かせてくる。通な人によると、音が湧き出るらしい。僕も聴きたくて聴きたくて震える。
さいごに
書いてて思うんだけど、おススメしたい音楽はたしかにいっぱいある。でも読む人はそんなにいろいろ興味ないんじゃないかと思う。おススメする音楽の種類くらい統一したほうが良い気がしてきた。笑
クラシックは読書しているときに聞くことが多いんだけど、他にもゲーム音楽は読書中によく聞く。次は懲りずにジャンルを変えてゲーム音楽とかも紹介したいな。
- アーティスト: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ベーム(カール),マティス(エディット),ハマリ(ユリア),オフマン(ヴィエスワフ),リッダーブッシュ(カール),ウィーン国立歌劇場合唱団,モーツァルト,ベーム(カール),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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ではまた
【読書】松下幸之助 一日一話
PHP総合研究所 編
ハングリー精神を取り戻せ
この名作はなんといっても実用本として効果が素晴らしいです。本の内容も簡単で、決して難しいことは書いてありません。僕は21歳頃に読みました。当時は就職活動も何をしてよいかわからずじまいで・・・、勉強しなきゃと思って購入しました。世間的に名作とされているからという動機でした。しかし、先日たまたま本棚から取り出してみて、「うわ・・・今の私の努力低すぎ・・・?」とこの本に気付かされてしまいました。
内容はというと、1月1日から12月31日まで、松下幸之助の書いたコラムを毎日1つ(250文字程度)を紹介してくれるものです。
例えば5月12日のタイトルは"使い捨てと経済性"。
高度成長の時代に「使い捨て」「消費は美徳」という考え方が浸透しました。私は時どき注射を打ちますけれども、見ていると一度使った注射器をすぐ捨てています。もったいないじゃないかと言ったら、消毒するガス代、水道代、洗う手間を考えたら捨てる方が安いというのです。なるほど、生産の経済性というものがそこまで上がったのかと驚きました。
使い捨てというとたいへんもったいなく思えますが、実は経済の法則にかなっているのです。しかし昔のことを知っている人間には、やはりもったいないという考えはある。その考えは尊く、それはそれで残し、経済性も重んじるということが必要だと思います。
これを見ると、やはり最後の一文から明治27年生まれの偉人の大きさが伺える。
僕はこの本を読む際に気をつけていたルールがあって、毎日必ず読むことと、必ず1コラム1箇所は傍線を引く、そしてその日は線を引いた内容を意識して行動するということです。1月1日から12月31日まで毎日欠かさずやってみたんですね。
といっても毎朝5分かからずできる作業ですから、どんな忙しい人でもできる簡単なことだと思います。
しかし、最近の僕にこのような姿勢、勉強への熱意というか向上心というか、当時と比べたらハングリーさがだいぶ欠けているなと気付かされてしまったわけです。
松下幸之助は、「人事を尽くして天命を待つ」とまで言うほどですから、よほどハングリーな男なのでしょう。
毎日簡単にできる小さなことをコツコツと
この本の特徴は、毎日1つのコラムを読んで考えるという習慣を着けてくれることです。書いてある内容も深みのあるものばかりですが、文章量は短く、どんな本にも言えることですが書いてあることだけやればいいというものではありません。
だからこそ、この本は毎日違う内容で、しかも少量ですからこの本に書いてあることが全てというわけではなく、これを読むという経験や習慣によって得られるものが大きいのだと僕は考えています。
僕はあらためてこの本をとり、かつてのハングリーさを取り戻しました。
実は他の一日一話シリーズも名著揃い
僕は最初こそ松下幸之助から入りましたが、翌年は鍵山秀三郎の一日一話により衝撃を受けました。彼はイエローハットの創業者ですが、こちらは特に思いやりの心や、彼の趣味である掃除の哲学がたくさん書かれています。こちらも松下幸之助のものに決して負けない名作です。
さいごに
追記:書いたつもりで消えてました(><
新書系も書いてみようかな。荒木飛呂彦の漫画術を買ってみたので、そのうちレビューしたい。
話逸れちゃったけど、毎朝人生のお手本みたいな記事読むのは結構テンションあがりますよ。
松下幸之助「一日一話」―仕事の知恵・人生の知恵 (PHP文庫)
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鍵山秀三郎「一日一話」―人間の磨き方・掃除の哲学・人生の心得
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ではまた
【音楽】Empire State of Mind
Empire State of Mind
JAY Z - The Blueprint 3 (2009年)
Empire State of Mind, Pt.II - Broken Down
Alicia Keys - The Element of Freedom (2009年)
ポン菓子にチョコレートをコーティング
HIPHOPとR&Bの合わせ技。この曲は”Empire State of Mind, Pt.II - Broken Down”というアリシアキーズがソロで歌うアンサーソングがあります。そちらを子供たちが歌う動画を見て「あぁこれは名曲だなぁ」と感動しました。(最後に貼っておきます)特に日本人から見るとまさに異文化なので感動が大きいのかもしれません。本人でもプロでもない動画でハマるケースが稀だったので、紹介したい。
最優秀コラボレーション歌謡曲
そんな僕の感想はおいといて、 音楽評論家から肯定され大衆的にも大ヒット、Billboard Hot 100で5週連続1位を獲得という実績のある名曲。ニューヨーク市へのアンセムだが、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、イタリア、スウェーデン等いくつもの国でヒットしている。そうした国と比べると日本では知られてない方なのかも。
アリシアキーズに夢中
まずは”Empire State of Mind”。キーズのスタイルが良すぎて惚れる。
あんまりキーズがカッコいいから調べて見て、Pt.IIの存在を発見したのでした。
ソロはこんな感じ。良い曲だし繰り返し聴いてるけど、やっぱりジェイジーがいないとちょっと寂しい気もする。
Empire State of Mind, Pt.II - Broken Downから見える異文化
なんとなく日本人が”上を向いて歩こう”を聴いて感じるノスタルジーみたいなのがあるのかなーと思っていましたが、これを見ていいなーと思ったんですよ。
途中のソロでラップを歌う少年のしぐさがイケメン。笑
さいごに
アリシアキーズはベートーヴェンやショパン、モーツァルトやエリックサティなどのクラシックに幼少の頃から触れていたそうです。このラインナップが好きな人は共感できるもの多いかも?
実はファーストアルバムのイントロがベートーヴェンの月光だったりする。クラシックもいいですよね。好きです。
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ではまた
【読書】禅と日本文化
禅ってあれでしょ、とか言っちゃう?
みなさん禅って良く知らないけど、ついつい禅問答を分析してこういうものでしょって考えて禅についてあまり踏み込まずに放置していませんか。少し古いですが、ジョブズが影響を受けたと公言していますから、結構興味をもってる人多いと思うんですよね。
ところで、この本を書いたのは鈴木大拙という近代の文学博士(仏教学者)です。禅関係の知識を得たいと思うなら必ず通る名前でしょう。序文から友人の西田幾多郎(こちらも超有名な日本の哲学者)が文章を書いており、文中で私の思想は君に負うところが大きいとまで言わしめている。哲学者にここまで言わせるほど、鈴木大拙は学才豊かで洞察力に富む人物でした。また、他の友人からも君は私が養うから学問をやれと言われるほどでした。
そんな彼が書いたこの本ですが、実は海外に向けて英語で書かれた本であり、訳者である北川桃雄さんの丹念によってできあがりました。鈴木大拙曰く、「たいていは吾意をえている。だいたいの意向が汲みとられれば、それでよい。かならずしも学術的正確性を期せぬ。」ということだ。
つまり、この本は禅とは何かということを欧米人にもわかるような講演を元に書かれているため、禅そのものへの入門書として比類なきものと評されているのです。理解するのが難解と言われる禅ですが、その最高の案内書というわけです。これがどうして名作じゃないことがありましょうか。
また、ジョブズが影響を受けるように芸術性とも関連の高い内容で、とくに今でこそ理解が浅くなってきている「わび」「さび」についても、この本を読むだけでしっかりと理解できるようになっています。これは下に書きますが、2章に相当する部分を読み込めばいいだけです。
入門書っていうけどぶっちゃけ難しめだよ
これはまぁしょうがないと思う。その代わり解説は明晰でこれ以上ない解説だなぁと感嘆するほどです。でも単語とか難しいよね。
目次はというと、
- 第一章 禅の予備知識
- 第二章 禅と美術
- 第三章 禅と武士
- 第四章 禅と剣道
- 第五章 禅と儒教
- 第六章 禅と茶道
- 第七章 禅と俳句
この7章だてになっており、禅への理解を深めた上で、次は美術や武士道や茶道の勉強に向かうこともできます。僕がこの本を買ったのは24歳くらいの時期でしたが、最近になってやっと「茶の本」も読み終えました。そういうのと比べると、やっぱり鈴木大拙の本はわかりやすいなという感想もありましたね。
実際、禅って結構面白いところがあるじゃないですか。そうした面白い逸話から解説してくれるので、少し難しくても読んでいて楽しいです。
たとえば、
多即一、一即多
という、禅の真理があります。
シェイクスピア的に言えば
美は醜であり、醜は美である
汝は我であり、我は汝である
というようなことになります。
禅匠が弟子のおろかな質問に対して「いや、わしにゃなにも解らぬ」と、何かの論理に従って返答しているにもかかわらず、その振る舞いは普通の推理法や評価基準とまったく逆になる理由でもある。
人間の魂の直接の表現であるような芸術品を作ったり、そうする技術に熟達したり、また正しく生きる術をえんとする場合、そうしたものはみな真に「伝え難き」もので、すなわち論議を主体とする悟性を超えたものであるとあると禅は考える。だからこそ禅のモットーは「言葉に頼るな」ということになる。つまり、経験によってセンスを磨けってこったね。
しかし、先ほどの
多即一、一即多
の理解を誤ると、というか一般にこの言葉を想像する場合、汎神論を意味すると考えやすい。つまり、「一なり多なりというものが存在して、それぞれ一方が他方の中にある」という風に考えてしまいがちだ。続いて、悪は善であり、醜は美であり、不完全は完全であり、またこれらの反対も同じと考えてしまいがちだ。これは、万物に神性が宿ると考える人々の陥る推論で、禅の説明はこれに似ているように見えるため誤解されるが、まったく違う話なのだ。
これはこうだから、あれはああだから、、、ではこれはこうでしょうかといったら馬鹿者ということになる。
「多即一、一即多」はそれだけで絶対の事実を完全に叙述しているのだ。それを分析して概念的に構成すべきではない。月をみて月と判ればそれで十分だ。この経験は絶対だ。ということになる。そして、これを十二分に理解するために、この入門書が役立ってくれる。
全部は紹介できないけど
このように非常に難解な禅ですが、理解するには勉強し、経験するしかありません。途中で間違うような薄っぺらい知識であればちょっと勉強するだけでわかるかもしれませんが、この本を読みたいと思う人はきっと自分のセンスを磨きたいという人でしょうから、そうした方々が禅を学ぶと、いかに経験が大事か、そして分別のようなものが物事を細かく曇らせるか、というようなことがわかってきます。
センスを磨きたければ、禅を避けては通れません。まずは入門書から是非お読みになってください。
さいごに
と、上から目線で色々いったけど、僕はまだこれ以降、より難しい禅の勉強をしていません(ちょっと関係するものならいくらか勉強しましたが)し、いわゆる禅の修業をしにいったことをありません。いつかやりたいと思っていますが。とはいうものの、当然読んで影響を受けた部分はあります。偉そうに書きましたが、そんなもんです。
ではまた
【音楽】チャンス到来
BARBEE BOYS 1985年
ソフトな甘酸っぱさで人気ロングラン
お菓子で例える、シリーズ化しちゃった。どんな曲って言われたらヨーグルみたいな曲なんだけど、バービーボーイズの他の曲はむしろ20円粉末ジュースのような力強さがある中、チャンス到来はソフトな甘酸っぱさがあるんです。
椎名林檎やポルノグラフィティなどが影響を受けたと公言する伝説のバンド
僕はいま29歳ですが同世代にバービーボーイズを知っている人は少ない。僕らの親世代は良く知る80年代ロックシーンで活躍したバンドだ。一番有名な曲は"目を閉じておいでよ"で、椿鬼奴とレイザーラモンRGがモノマネをしている。こちらもかなりの名曲。
高速のサービスエリアには必ずある
サービスエリア(以下SA)には必ず懐メロCDコーナーがある。それこそ浜崎あゆみからフランク永井までいろいろあるが、とにかく大ヒットしたものが、専用のちょっと残念な印象をぬぐえないパッケージになって販売されているのだ。僕は今回たまたま男4人でドライブする機会があり、立ち寄ったSAにてバービーボーイズのベストアルバムを発見した。そこから約600kmほどリピートし続けたにも関わらず、各自帰宅後にダウンロードし自主練を始めるという異例の大ヒットとなった。昼夜問わず、皆聞きまくった。
その結果、我々の見識では夜のドライブで聞くバービーボーイズは特に痺れるということがわかった。そんな雰囲気があるのだ。
痺れるほどカッコいい
”目を閉じておいでよ"、"女ぎつね on the Run"、"でも!?しょうがない"、"三日月の憂鬱”、"暗闇でDANCE”等、どれをとっても演奏ボーカルともにとにかくカッコいい。ここに挙げてない曲でもカッコいい曲なら数えきれない。
そんな中で光る"チャンス到来"という名曲。僕らに一番ヒットした曲はこの優しいムードの曲だった。それでもKONTAのソプラノサックスが結局めちゃくちゃカッコいい。
バービーボーイズはKONTAと杏子による男女混声ツインボーカルというだけでも強烈な個性だが、サウンドも抜群。一緒にドライブした仲間以外の友人にも勧めてみたところ、全員が気に入ってくれたほどのクオリティだ。僕は先ほどからカッコいいとしか言えてないが、聞かせてみた友人は「これFIRE BOMBERと同じくらい熱いな!」と言っていた。これはFIRE BOMBERのファンしか言わない例えであり、極上の褒め言葉と受け取れます。バービーボーイズは割とクールな曲が多いため意外な感想でしたが、たしかに似たカッコよさはあるかもしれません。
演奏だけじゃない
作詞作曲はギターでリーダーのいまみちともたかが、ほぼすべての楽曲を担当している。曲のカッコよさは述べた通りだが、実は歌詞もかなり洒落ている。
たとえば有名な、
目を閉じておいでよ 顔は奴と違うから
とか、ダサい作詞家ではこうは書けないと思うのです。作詞家ではありませんが、僕ならもっとダサいこと書いてしまうと思うのです。
そこで彼のことをよくよく調べてみると、父親は、哲学者、美学者であった今道友信(元東京大学名誉教授、元聖トマス大学名誉教授)、母は元ソプラノ歌手で音楽大学の教授ということで、なるほど学のある歌詞を書くなぁと思わせるのです。
彼は現在、椎名林檎の実兄、椎名純平と4人でバンドを組んでいるようです。
チャンス到来から話がそれました
"チャンス到来"はバービーボーイズの他の曲と比べて、歌詞がめちゃくちゃ良いだとか演奏が半端じゃなくカッコいいとか際立っているわけではありません。でも、僕らのNo.1は "チャンス到来"でした。聴きやすくて絶妙な音楽が聴いていてとても気持ちいいからです。食わず嫌いせず聴いてみて下さい。
さいごに
何かきっかけがないとなかなか新しい音楽を探すことってないと思うんですよ。今回はじめてSAでCD買いましたが、長距離のドライブなら良い思い出になりますよ。
ではまた