ナリカワLAB

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【読書】写真を使わないレシピ本"ムーミンママのお料理の本"がそそる

 こんにちは、ナリカワです。 11個目!

 今日も名作を一つ紹介したい。

 

作:サミ・マリラ 絵と引用文:トーベ・ヤンソン 訳:渡部 翠 講談社 1996年

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裸エプロンがそそる、とかそういう話ではない。

 

料理は作って覚えるもの

 この本には150種類程のレシピが載っています。しかし、この本が優れている点は、レシピが沢山載っているとか、説明がわかりやすいとか、その通り作るだけで美味しいとか、でもありません

 

 とはいうものの、気になる人もいることでしょう。実際にどんなレシピが載っているのかというと、「カスタードソース」や「ココア」や「ラスク」の作り方から、「薫製の魚」「ムーミン屋敷の冬サラダ(ロソッリ)」「フィリフヨンカの残り物箱(箱とはグラタンのこと)」など、普段用からちょっと手の込んだレシピまで幅広いです。

ココア KAAKAO

 牛乳はこげやすいので厚底のなべを使います。なべの底にひたひたになるくらいの少量の水をはっておいてから牛乳を入れます。

 混ぜながら沸騰させ、なべを火からおろして、ココアをだまにならないようによく混ぜながら加えます。色を見ながら量を加減して、うすいのが好きな人は少なく濃いのが好きな人は多く入れます。

 カップに注ぎ、佐藤は各自好みの量を加えます。生クリームの泡立てたのを浮かべれば、ちょっぴり贅沢な気分!

 こうした文章からムーミンママのやさしさも伝わるようですが、僕がこの本を開いて名作だと感じたのは、こうした点ではないのです。この本には他にいくつもの優れた点がありました。

 

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お料理をする人のこころえ

 本を開けてすぐ「死ぬほど大変なことなんてない、たとえ料理に失敗したって大したことではない」と前置きしつつも、”お料理をする人のこころえ”として料理を始める前に材料や器を用意する、下ごしらえもあるし前日の作業も多い、明日の料理の計画を今日立てておかなければいけない等、大変なことがたくさん書いてある。

 僕はここが気に入っていて、ムーミンママから本当のことを教えてもらっているような気持ちになるのだ。

 そして、「薫製やジュースづくりは料理上手な人に手ほどきしてもらうのが無難」「はじめて料理する人はやさしいものから挑戦してください」と言い、「料理が楽しくなってくるころには、この本のレシピに自分なりのアレンジが加えられるようにもなることでしょう」「基本的な方法のみをのせてあります」といったことが伝えられます。

 

 僕はこれを読んで、なるほどこの本の狙いは何度も料理を作ることかと感じました。一夜限りのもてなしのためだけではなく、毎日の食卓から友人が訪ねてくるときも"おいしくてステキなひととき"をつくってあげられるようになる、このことを最終目標としているのです。それは、ムーミンママの台所でミィたちがくつろいでおしゃべりしている様子がお手本です。

 

 

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"ムーミンママのお料理の本"に感じる機能美

 このような大きな目標達成のためには、長く置いておける本、何度も開きたくなる本でなければいけないと思います。

 特に、長く置いておくなら表紙や装丁は素敵なものが良いですよね。来客の際でも家族との会話でも、この本自体が話のタネになることもありそうです。

 そして、誰でもおもてなしするなら「10分で作れる簡単カフェ料理」みたいなタイトルのレシピ本をお客様に見せたいとは思わないはずです。

 もちろん美味しい料理が作れて、それでOKというのも本当だと思います。でも、このレシピで作ったんだって話しをしたときに、僕が嬉しいのは"ムーミンママのお料理の本"ですよ。さらに、レシピからこうアレンジしたなんてことまで笑顔で言われたら惚れます

 

 料理上手、つまり空気も含めて気持ちのいい食卓を作れるようになる、ただ料理を作るだけでなく、そこまでしてくれる実用本としてみると、なかなかこれは名作だと思うわけです。まだ料理が上手ではないのに本格的な本を家に置くのは気後れしちゃうし、かといって「5分で作れる」とかがタイトルについちゃってる本はあんまり愛が感じられないかなとか、おもてなしの相手は気にしないかもしれませんがこちらが気になってしまいますよね。

 

 でも、こうしたことは理屈で覚えるよりも、愛情で知るものかもしれません。だから僕は、"ムーミンママのお料理の本"は極上の愛情が詰まった美味しい本だと思うのです。

 

 

ムーミンママのお料理の本

ムーミンママのお料理の本

 

 ではまた